2006年頃、三月から九月ころまでスウェーデンにいた
スウェーデンの春というのは凄まじかった。
僕はまるごと体験してはいないけれど、それまでは深く長く重い冬である。
三月四月ごろでもとにかくそこらじゅうに雪が積もっていて、どんよりしている。
みんなダウンに手袋、ニットの帽子を着けて、ファーのついたブーツなんか履いている。
そこに、ある日突然「春」がやってくる。
ある日を境に、太陽の光線が地上に差し込んでくるようになる
昨日とは空が違う、空気が違う。
嵐のようにやってきた春に急かされるように、緑や鮮やかな花々がそこここに噴出する。
春に呼ばれて飛び出すのは草花だけではない。
気温が8℃ともなれば、スウェーデンの人は喜び勇んで半袖になり、日光浴に出かけてゆく。
日本でいえば、本日の最高気温25℃、そんな感じだろうか。
それを過ぎるともう初夏の趣になるのである。
突然変わってゆく気候と、それを体いっぱいに抱きしめようとい人々の生命力は本当に嵐のようで、目まぐるしくて、目の眩むものだった。
梅の香りがどうとか、昨日は春一番が吹いたが今日は穏やかだとか、桜前線が近畿まできたとか来ないとか、そんな春しか知らない僕はとても驚いて、すこし疲れてしまったのを覚えている。
やはり痛いほど嬉しいような気持ちは、長い冬を耐え忍んではじめて分かるものなんだろう。
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