尺八ってどんな楽器?
尺八は日本の伝統的な管楽器です。
特徴は……
・江戸時代の禅僧「虚無僧」が吹いていた
・竹製、指穴が5つ、「歌口は」外側をカット
・「音色」がとても多様!
・とても豊かな表現の可能性を秘めている
尺八の歴史
多様な文脈を渡り歩いた楽器、尺八
尺八は、遣唐使の時代に、現在の「雅楽」の楽器の一つとして中国から持ち込まれました。現在でも正倉院に当時の楽器が収蔵されています。しかし、平安時代に雅楽の国風化が進む中で演奏されることがなくなり、記録も途絶えてしまいます。
現在の形の楽器が普及したのは江戸時代で、虚無僧と呼ばれる禅僧が修行のために吹奏しました。表向きは虚無僧しか吹奏できないということになっていましたが、実際には民間人への教授も進んでいたようです。
明治期に入ると、前時代に特権を持っていた虚無僧の「普化宗」が取り潰しとなってしまいます。宗教的な文脈を捨てて「音楽」としての生き残りを果たした尺八は、さまざまなジャンルで演奏されることで現在まで伝承されています。
楽器の特徴
シンプルさとアナログさ
尺八は、竹の筒に指穴を開け上端を外側にカットした、非常にシンプルな構造をしています。指穴も通常5つと少ない形で江戸時代から伝承されてきました。
指穴の操作だけでは出ない音程があり、「メリカリ」と呼ばれる顎の操作を組み合わせて音を作っていきます。
西洋の管楽器がキーシステムを取り入れたり、金属素材で品質を安定させたりして機能性を追求したのとは、真逆をいくような方向性を持っています。
なぜわざわざ「不便さ」を維持するのでしょうか?
それは、シンプルな構造からくるアナログ性に「音色の多様さ」という魅力が伴っているからだと考えられます。
尺八は、演奏技術が伴えば音程・音色・音量を幅広くコントロールできるため、とても豊かな表現の可能性を秘めています。
どんな音楽を演奏する楽器?
古典からポピュラーまで
尺八は昨今、ありとあらゆる音楽ジャンルの中で演奏されています。
古いところでは、江戸時代の虚無僧音楽、箏や三味線の音楽である「地歌・箏曲」との合奏の「三曲」。
明治以降には、お正月に耳にする《春の海》で有名な宮城道雄の音楽、民謡や歌謡曲。
現代邦楽曲や現代音楽、ジャズやポップス、ロック。
その他にも多くの音楽ジャンルで活躍しています。
尺八のいいところって?
それぞれの尺八観
尺八は歴史的にも、楽器の特性からも、非常に多様な文脈や可能性をはらんで現在まで演奏されています。尺八がどういう楽器なのか、ということを一言で言い表すことは難しいといえます。
逆に、尺八の魅力はそのような多様さを受け止められるところにあるのではないでしょうか。楽器をよく知るにつれ、それぞれの尺八観を尊重しつつ、お互いに高めあうことのできる楽器だと感じられます。